賭博の借金と勝ち金は、法律上どう扱われるのか
賭けに勝って受け取るはずのお金も、負けて払うことになったお金も、民法の上では「公序良俗」に反する約束から生まれたものとして扱われるため、裁判所はその支払いの実現に手を貸さないというのが、条文と最高裁判所の判決が示している考え方です。
このページの要点
- 民法90条は公の秩序または善良の風俗に反する法律行為を無効とし、最高裁は賭博行為がこれに甚だしく反するとしています
- 民法708条は、不法な原因のために給付をした者は、その返還を請求できないと定めています
- 最高裁判所は1997年11月11日の判決で、賭博の債権が譲渡され、債務者が異議をとどめずに承諾していても、特段の事情がない限り無効を主張して支払いを拒めるとしました
- オンラインカジノが勝ち金を払わない場合を直接扱った日本の判決は、私たちが調べた範囲では見つかっていません
- 借金の返済に困ったときの相談先は、法テラスのサポートダイヤルが案内しています
民法の2つの条文
民法90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」と定め、708条は、不法な原因のために給付をした者は「その給付したものの返還を請求することができない」としています。前者は約束を守らせる力を否定する条文であり、後者は渡してしまったお金を取り戻す道を閉ざす条文なので、私たちの整理では、賭博をめぐるお金はこの2つの条文の間に置かれているということになります。
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
708条には、ただし書きがあります。不法な原因が「受益者についてのみ存したとき」、つまり受け取った側だけに不法な原因があった場合は、返還を求められないという原則から外されます(708条ただし書き)。
最高裁判所の1997年の判決
最高裁判所第三小法廷の1997年11月11日の判決(平成7年(オ)第2025号、民集51巻10号4077頁)は、「賭博の負け金」から生じた7,000万円の債権が争われた事件で、賭博で生まれた債権を裁判所がどう扱うかという点を、はっきり示しました。
判決が取り上げたのは、「賭博の勝ち負けによって生じた債権」がほかの人に譲り渡され、債務者が異議をとどめずにその譲渡を承諾していた場合です。そのような場合でも、「債務者に信義則に反する行為があるなどの特段の事情のない限り」、債務者は譲り受けた人に対して「公序良俗違反による無効」を主張し、「その履行を拒むことができる」というのが判決の結論です。その理由として判決が挙げたのは、「賭博行為は公の秩序及び善良の風俗に反すること甚だしく、賭博債権が直接的にせよ間接的にせよ満足を受けることを禁止すべきことは法の強い要請であって」という考え方です。
債権を第三者に回して取り立てる形にしても、賭博の約束が有効になるわけではなく、私たちはこの判決を、賭博で生まれた請求権を裁判所が実現させないという姿勢をはっきり示したものと読んでいます。
オンラインカジノが勝ち金を払わない場合
この考え方をあてはめると、日本から賭けたオンラインカジノで勝った分の支払いを求める権利は、公序良俗に反する賭博の契約から生じたものなので、裁判所に支払いを命じてもらうことは期待できません。日本国内から賭けること自体が刑法185条の賭博にあたる以上(オンラインカジノの違法性)、勝ち金の請求は、違法な賭けを前提にした請求ということになります。
仮に勝ち金が支払われたとしても、警察庁の資料(保安課風俗環境対策室)は、オンラインカジノから受け取るお金を「犯罪による収益」と位置づけ、クレジットカードが使えなくなったり、銀行口座が凍結されたりするリスクを挙げています。税の上では、違法な賭博で得たお金も所得として扱われうるので(所得税基本通達36-1)、この点はギャンブルの払戻金と税金のページで扱っています。
ただし、オンラインカジノが勝ち金を払わなかったという事件そのものについての日本の判決は、私たちが判例や公表資料を調べた範囲では見つかっていません。ここで書いているのは、民法の条文と1997年の判決をあてはめたときの結論であり、出金を止められる手口については出金できないサイトで取り上げています。
負けたお金を取り戻したい場合
反対に、オンラインカジノで負けたお金を取り戻したいと考えても、賭けるために渡したお金は、原則として「不法な原因のために給付をした」もの(民法708条)にあたるため、返還を求めることはできないと考えられます。オンラインカジノに入金したお金について、先に見たただし書きを使って返還を認めた判決も、私たちは見つけていません。
友人どうしの賭けマージャンのような私的な賭けの負け金も、同じ考え方によれば無効になるので(民法90条)、支払いを約束していても、裁判で取り立てることはできないと私たちは考えています。1997年の判決の事件も、もとは賭博の負け金でした。
賭けのためにした借金の相談先
このページの説明は賭博そのものから生じた債権についてのもので、賭けるために消費者金融やカードで借りたお金の扱い(借入れの契約の効力など)には触れていません。返済に困っているときは、「法テラス・サポートダイヤル」(0570-078374、平日9時〜21時、土曜9時〜17時、祝日と年末年始を除く)が、問題に合った相談窓口や制度を案内しており、案内そのものは無料で、通話料だけがかかります。
法テラスの無料法律相談は、収入と資産が一定の基準を下回る人が対象で、予約をしたうえで、1回30分、同じ問題について3回まで無料で受けられます。自己破産の手続では、「賭博その他の射幸行為」で著しく財産を減らしたことが免責を許可しない事由の一つですが(破産法252条1項4号)、事情を考慮して許可する裁量免責の定めもあります(同条2項)。法テラスも、免責が認められないことがある例に「ギャンブルや過度な買い物や飲食で債務を負った」場合を挙げているので、私たちは、一人で判断せずに専門家に相談することをおすすめしており、債務整理の方法は借金の相談にまとめています。
賭博の勝ち金も負け金も法律が守らない以上、お金のトラブルを法的に解決する手段はかなり限られるため、私たちは、賭ける前の段階で立ち止まることがいちばん確かな対策だと考えています。賭けることをやめたいのにやめられない場合の窓口は、家族が相談できる先も含めて相談窓口と支援にまとめています。
よくある質問
オンラインカジノが勝ち金を払ってくれません。裁判で請求できますか。
賭博で生じた債権は民法90条により無効とされ、最高裁も賭博の債権の実現を認めない立場をとっているため、請求が認められることは期待できません。日本国内から賭けたこと自体が賭博罪にあたる点にも注意が必要です。
オンラインカジノで負けたお金は取り戻せますか。
賭けるために渡したお金は、原則として民法708条の「不法な原因のために給付をした」ものにあたり、返還を求めることはできないと考えられます。オンラインカジノについて返還を認めた判決は見つかっていません。
友人との賭けで負けたお金は、払わなければなりませんか。
賭博の勝ち負けから生まれた債権は、公序良俗に反する契約によるものとして無効とされ、裁判で取り立てることはできないと考えられます。ただし、賭けたこと自体が賭博罪にあたりうる点は別の問題です。
賭けのためにした借金で困っています。どこに相談できますか。
法テラス・サポートダイヤル(0570-078374)が相談先を案内しています。債務整理の方法は借金の相談のページで説明しています。
出典と参考資料
- 民法(第90条、第708条)、e-Gov法令検索
- 最高裁判所第三小法廷 平成9年11月11日判決(平成7年(オ)第2025号)、裁判所
- 刑法(第185条)、e-Gov法令検索
- 破産法(第252条)、e-Gov法令検索
- オンラインカジノを巡る現状と対策(基調講演)、警察庁保安課風俗環境対策室
- 法テラス・サポートダイヤル、日本司法支援センター(法テラス)
- 無料法律相談のご利用の流れ、日本司法支援センター(法テラス)