オンラインカジノはなぜ違法なのか
「海外の政府から免許を受けたカジノだから、日本から遊んでも問題はない」という説明は宣伝の文句として長く使われてきましたが、刑法の条文にも、政府の答弁にも、実際に出された命令にも、この説明を支えるものは見つかりません。
このページの要点
- 日本国内から接続して賭けることは、運営元が海外で合法でも刑法185条の賭博罪にあたり、常習であれば186条により3年以下の拘禁刑の対象になります
- 2016年に京都府警が利用者3人を逮捕した事件では、3人とも罰金20万円または30万円の略式命令を受けており、「1人は不起訴になった」という話は誤りです
- 2025年のオンライン上の賭博事犯の検挙は165事件・317人で、店舗を持たない海外サイトの利用者だけで196人にのぼりました
- 2025年9月25日からは、オンラインカジノのサイトを示すことや、そこへ誘導する情報を発信することも法律で禁止されています
刑法が罰しているのは「賭けること」そのもの
刑法185条は「賭博をした者」を罰すると定めているだけで、賭けの場所が店舗か画面か、相手が国内の業者か海外の業者かという区別を、条文のどこにも置いていません。罰せられるのは賭けの場を開いた側に限られず、その場で賭けた側も同じであり、利用者は罰せられないという思い込みとは反対に、条文はまず賭けた人を対象にしています。
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
常習として賭博をした者は、三年以下の拘禁刑に処する。
2 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の拘禁刑に処する。
ただし書きの「一時の娯楽に供する物」について、判例は関係者が一時の娯楽のために消費する飲食物のような物を指すとし(大審院昭和4年2月18日判決)、金銭そのものはこれにあたらないとしています(最高裁判所昭和23年10月7日判決)。金銭そのものを賭ければ、ただし書きにはあたりません。186条にある拘禁刑は、2025年6月1日に施行された刑法の改正(令和4年法律第67号)で懲役と禁錮が一本化された刑の名前で、古い記事が同じ条文を「懲役」と書いているのは改正前の表記にすぎず、刑期の上限(3年以下)は変わっていません。
「サーバーが海外にある」は理由にならない
オンラインカジノの宣伝がよく持ち出すのは、運営会社が外国の当局から免許を受けており、サーバーも海外にあるので日本の法律は及ばないという理屈です。しかし刑法1条は、この法律を「日本国内において罪を犯したすべての者」に適用すると定めており、問題になるのは賭けている人がどこにいるかです。
政府は2013年の答弁書(内閣衆質185第17号)で、一般論として、賭博行為の一部が日本国内で行われた場合には賭博罪が成立しうるという考えを示しており、自宅のスマートフォンで賭け金を選んで「ベット」を押す行為は、その「一部」にそのままあてはまると私たちは読んでいます。
警察庁はこの点をさらに短く、海外で合法的に運営されているオンラインカジノであっても、日本国内から接続して賭博を行うことは犯罪だと書いています。政府広報オンラインの記事(2025年6月25日)も「グレーゾーン」はないと言い切っており、私たちが確認した公的な資料の中に、利用者は罰せられないとする説明は一つもありませんでした。
海外の免許が保証しているもの
運営会社の免許は、その国の当局が自国の規制にもとづいて事業者に与えた許可であって、日本に住む人が賭けてよいという許可ではありません。免許の国で合法であることと、日本から利用して合法であることは、まったく別の問題です。
2016年の事件と「不起訴」のうわさ
「グレーゾーン」という言葉が広まった理由の一つに、2016年3月に京都府警が利用者3人を単純賭博の容疑で逮捕した事件があると私たちは見ています。イギリスに拠点を置き、日本人のディーラーを置いたサイトでブラックジャックに賭けていたというもので、店舗を持たないオンラインカジノの利用者が逮捕された最初の例とされています。
この事件については、そのうち1人が争って不起訴になったという話が繰り返し語られてきましたが、政府は2020年の答弁書(内閣衆質201第61号)で、3人の事件はいずれも京都区検察庁が賭博罪で起訴して略式命令を請求し、京都簡易裁判所が罰金20万円または30万円の略式命令を出したと答えています。
不起訴の利用者はいませんでした。この点を確かめないまま「グレーゾーン」を語る記事は出発点からつまずいていると私たちは考えており、記事を読むときには、出典に答弁書や判決が挙がっているかを確かめることをおすすめします。
数字が示す取り締まりの広がり
警察庁の統計を私たちが年ごとに確かめると、オンライン上で行われた賭博事犯の検挙は2023年の13事件・107人から、2024年に62事件・279人、2025年には165事件・317人へと増えました。2025年の数字のうち、店舗を持たない海外サイトなどでの賭博は158事件・221人で、そのうち賭けた側の利用者が150事件・196人です。
運営や決済、宣伝にかかわった側も同じ年に8事件・25人が検挙されており(統計の「運営等」には決済代行業者やアフィリエイターが含まれます)、年ごとの表と内訳は摘発の現状のページにまとめています。
警察庁が委託した調査の報告書(2025年1月、同年3月に公表)は、オンラインカジノの経験者を約336.9万人、現在の利用者を約196.7万人と推計しました。オンラインカジノを知っている人の43.5%は、違法だと認識していなかったと答えており、編集部がこのページを最初に読んでほしいページの一つに置いているのは、この数字があるからです。
「無料版」や「ボーナスだけ」なら問題はないのか
警察庁は、有料版はもちろん「無料版」や無料ボーナス(ポイント)であっても、オンラインカジノの利用は絶対にやめるよう呼びかけていますが、これは利用をやめさせるための注意喚起であって、無料で遊ぶこと自体を犯罪と断定した説明ではありません。それでも私たちがこの呼びかけを重く見るのは、入金不要の「ボーナス」が、出金の条件を満たそうとする人を入金へ進ませる入口として作られていることが多いと考えているからです。無料の段階で止まる人ばかりではない、というのが仕組みから見た結論です。
利用した場合に起こりうること
刑事の面では、1回でも賭ければ185条の罰金または科料の対象になり、繰り返し賭けていれば「常習」として186条の拘禁刑(3年以下)の対象にもなりえます。私たちが2025年に検挙された利用者196人という数字を挙げるのは、その可能性が机上のものではないことを示すためです。
お金の面では、金融庁と警察庁が2025年5月に、利用者がオンラインカジノへの決済をしようとしていると把握した場合には決済を止めるよう、銀行などに要請しました。警察庁は、オンラインカジノで受け取ったお金は犯罪による収益だという立場から、カードが使えなくなったり口座が凍結されたりするリスクがあると注意しています。
民事の面では、賭博で生じた債権は公序良俗に反して無効とされ(民法90条)、賭けたお金も不法な原因のために給付したものとして返還を求めにくくなるため(民法708条)、サイトが勝ち金を払わなくても、法律上の手段で取り戻せる見込みはほとんどありません(くわしくは賭博の借金・勝ち金と民法)。仮に、月に3万円ずつ入金していた人が50万円の勝ちを出金しようとして止められた場合、その人の手元に残るのは、違法な賭けの記録と、法律上の手段で取り立てる道がほとんどない請求だけです。
よくある質問
海外の政府の免許があるオンラインカジノなら、日本から遊んでも合法ですか。
合法ではありません。免許はその国での営業の許可で、日本国内から接続して賭ければ刑法185条の賭博罪にあたるというのが、政府と警察庁の示している考え方です。
スマートフォンのアプリや仮想通貨での入金なら違いますか。
違いはありません。条文が罰しているのは賭けることそのものであり、アプリかサイトか、円か仮想通貨かという方法の違いで結論は変わりません。
「グレーゾーン」と書いてあるサイトがあるのはなぜですか。
2016年の事件で「1人が不起訴になった」という誤った話が広まったことが一因だと私たちは見ていますが、政府の答弁書は3人とも罰金の略式命令を受けたと明らかにしており、政府広報も「グレーゾーン」はないとしています。
過去にオンラインカジノで遊んだことがあり、不安です。どこに相談できますか。
法律上の扱いは弁護士に相談するのが確実で、費用の心配があれば法テラス(0570-078374)が窓口を案内しています。やめたいのにやめられない場合は、精神保健福祉センターなどの相談窓口も使えます。
出典と参考資料
- 刑法(第1条、第185条、第186条)、e-Gov法令検索
- 賭博及び富くじに関する罪、ウィキペディア日本語版(「一時の娯楽に供する物」についての判例)
- 衆議院議員の質問に対する答弁書(内閣衆質185第17号、2013年11月1日)、衆議院
- 衆議院議員の質問に対する答弁書(内閣衆質201第61号、2020年2月28日)、衆議院
- オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!、警察庁
- オンラインカジノによる賭博は犯罪です!広告・宣伝することも禁止に!、政府広報オンライン、2025年6月25日
- 令和7年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について、警察庁、2026年4月
- オンラインカジノの実態把握のための調査研究 報告書、警察庁委託調査、2025年1月
- オンラインカジノを巡る現状と対策(基調講演)、警察庁保安課風俗環境対策室
- オンラインカジノに係る賭博事犯防止等について、金融庁・警察庁、2025年5月