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「必勝法」と呼ばれる賭け方と、変わらない期待値

「マーチンゲール法」や「ダランベール法」のように「必勝法」として紹介される賭け方は、賭け金を上げ下げする順番を決めているだけで、1回ごとの賭けに含まれる不利には手を触れていないため、編集部が分数で計算し直すと、損失の期待値はどの方法でも「控除率×賭けた総額」のままでした。

このページの要点

  • ヨーロピアンルーレットでは、1つの数字に賭けても赤か黒かに賭けても、1回の賭けの期待値は賭け金のちょうど−1/37(約−2.70%)です
  • 期待値は足し算ができるため、賭け金をどのような順番で上げ下げしても、損失の期待値は控除率に賭けた総額を掛けた額になります
  • 負けたら上げる方法は小さな勝ちを重ねる代わりにまれな大きな負けを抱え、勝ったら上げる方法はその反対の形になります
  • 編集部が15の賭け方を同じ条件で2,000万回ずつシミュレーションすると、賭けた総額に対する収支はすべて−2.68%から−2.77%の間に収まりました

「必勝法」が出回っている場所

賭け方の解説は日本語のウェブサイトにも数多くありますが、私たちが各方法の決まりを確かめるために読んだページ(2026年10月に確認)は、ほとんどがオンラインカジノの利用を勧めるサイトでした。私たちはそこから賭け方の決まりだけを読み取り、「勝率」や利益についての記述は、この章の計算には使っていません。

日本国内からオンラインカジノで賭けることは、運営元が海外で合法に営業していても刑法185条の賭博罪にあたるため(くわしくはオンラインカジノの違法性)、この章の計算は遊び方の案内ではなく、宣伝で使われる数字を検算する材料として書いています。国民生活センターは、ギャンブルなどで「高額収入を得るためのノウハウ等と称して販売されている情報」を「情報商材」と呼んで注意を呼びかけており、お金を払って手に入れる「必勝法」については、必勝法・攻略ツールの販売のページでも扱っています。

賭け方では期待値が変わらない理由

カジノのゲームでは、1回ごとの賭けに「控除率」(ハウスエッジ)と呼ばれる不利が組み込まれており、ヨーロピアンルーレット(0が1つで37マス)では、1つの数字への賭けも赤か黒かへの賭けも、期待値は賭け金のちょうど−1/37(約−2.70%)です。当たりやすい賭けほど払い戻しが小さく決められているので、どこに賭けるかで不利の大きさは変わりません。

ヨーロピアンルーレットの賭けと期待値(編集部の計算)
賭ける場所数字の数当たる確率払い戻し期待値
1つの数字11/37賭け金の36倍−2.70%
2つの数字22/3718倍−2.70%
3つの数字33/3712倍−2.70%
4つの数字44/379倍−2.70%
6つの数字66/376倍−2.70%
ダズン・コラム1212/373倍−2.70%
赤黒・奇数偶数・ハイロー1818/372倍−2.70%

期待値には、いくつもの賭けを合わせた結果の期待値が、一つひとつの期待値の合計になるという性質があります。次に賭ける額を前の結果で決める場合も、その額は回る前に決まっているので、この性質はそのまま成り立ち、賭け金をどんな順番で上げ下げしても、損失の期待値は「控除率×賭けた総額」(ヨーロピアンルーレットなら賭けた総額の1/37)になります。賭け方で変わるのは、勝ち負けがどんな形で現れるかという、結果のばらつきだけです。

編集部は計算を確かめるため、ヨーロピアンルーレットで最低1,000円・上限50,000円という共通の条件を置き、15の賭け方をそれぞれ2,000万回ずつシミュレーションし(乱数の初期値は方法ごとに固定)、賭けた総額に対する収支がすべて−2.68%から−2.77%の間に収まることを確かめました。どれも計算上の−2.70%との差は、乱数による誤差の範囲です。

賭け方の種類と、それぞれがぶつかる壁

「必勝法」には多くの名前がありますが、賭け金をいつ上げるかという点で分けると、次の表のように6つの種類にまとまります。負けた後に上げる方法は小さな勝ちを積み重ねる代わりにまれな大きな負けを抱え、勝った後に上げる方法は反対に、小さな負けを重ねながらまれな大きな勝ちを待つ形になります。

「必勝法」と呼ばれる賭け方の種類(かっこ内は別名)
種類名前賭け方ぶつかる壁
負けたら上げるマーチンゲール法、グランマーチンゲール法、ダランベール法(ピラミッド法)、フィボナッチ法、ココモ法、改良版ココモ法、ラブシェール法(キャンセレーション法、スプリットマーチンゲール)、モンテカルロ法、ウィナーズ投資法、2in1法、31システム負けた後に賭け金を上げ、少ない勝ちで取り返そうとするテーブルの上限と資金。小さな勝ちの積み重ねを、まれな大きな負けで払う
勝ったら上げるパーレー法(逆マーチンゲール法、パロリ法)、アンチマーチンゲール法、パロリー、逆ダランベール法、グッドマン法(1235法)、バーネット法(1326法)、イーストコースト法(イーストコーストプログレッション法)、オスカーズグラインド法、逆ラブシェール法勝った後に賭け金を上げる連勝はまれで、1回の負けでその回の利益が消える
同じ額で賭けるフラットベット(均一賭け)毎回同じ額を賭ける賭けた総額の約2.70%が期待値として失われる。ばらつきは最も小さい
広く賭ける2コラム2ダズン法、ベアビック法多くの数字に同時に賭けるどのマスも期待値は−1/37で、当たる回数が増えても期待値は同じ
出目で選ぶ2/3ベット法(空回し)、シフトベット法過去の出目から賭ける場所を選ぶ1回ごとの結果は独立しており、過去の出目は次の確率を変えない
額とやめどきを決めるケリー基準、10%法、ハーフストップ法いくら賭け、いつやめるかを決めるケリー基準の答えは「賭けない」。期待値がマイナスなら、額ややめどきの決まりでは期待値は変わらない

壁の位置は方法ごとに違い、たとえばマーチンゲール法を1,000円から始める場合、倍にできるのは上限50,000円の手前の32,000円までの6回なので、6連敗すれば合計63,000円を失います。編集部の計算では、その確率は約54.5回に1回(ヨーロピアンの赤黒の場合)で、それまでに積み上げた1,000円ずつの勝ちがまとめて消えます。

表の中の小さな方法と、その壁

表に挙げた名前の中には、ほかの方法の決まりを組み合わせたものや一部だけを変えたものも多いため、私たちは次の6つについて、独立したページを設けずに要点だけをまとめました(金額は1単位を1,000円とした場合)。

  • 31システム:1,000円、1,000円、1,000円、2,000円、2,000円、4,000円、4,000円、8,000円、8,000円の9段階(合計31,000円)を使い、2連勝で区切る方法です。負けは最大31,000円に限られますが、編集部の計算では約9系列に1回(11.2%)は最後の段まで負けて終わり、期待値は賭けた額の−1/37です。
  • 2in1法:名前に反して複数の場所に賭ける方法ではなく、2連敗の後に「1、1」と書いたラブシェール法で2回分の負けを取り戻そうとする方法で、壁もラブシェール法と同じです。
  • ウィナーズ投資法:2連敗の後に「1、1」と書いた数列で賭け金を決める方法で、解説によって決まりが大きく違いますが、負けと同じ数の勝ちが必要になり、勝ち負けが交互に続くと数列が長くなります。
  • イーストコースト法:2連勝の後に賭け金を上げる方法で、3回目の賭けで負けると1単位の負けで終わります。
  • 2コラム2ダズン法:2つのコラムと2つのダズンに1,000円ずつ賭けて37のうち32の数字をカバーし、「勝率」86.5%とされますが、利益が出るのは16の数字(約43.2%)だけで、1か所だけ当たると1,000円の負けです。
  • ベアビック法:35の数字に1,000円ずつ賭ける方法で、約94.6%の回は1,000円の勝ち、約5.4%の回は35,000円の負けになります。

どの方法も、カバーする数字を増やしたり負けの上限を段階で区切ったりして「負けにくさ」を見せていますが、1か所ごとの期待値が−1/37のままなので、全体の期待値も賭けた額の−1/37から動きません。

「そろそろ黒が出る」という考え方

赤が何回続いても、ルーレットの1回ごとの結果は前の回とは独立しているため、次に黒が出る確率はヨーロピアンでは18/37のまま変わらず、続いた結果が次の確率を変えると考える誤りは「ギャンブラーの誤謬」と呼ばれています(「モンテカルロの誤謬」という呼び方もあります)。過去の出目から賭ける場所を選ぶ方法も、負けた後は勝ちやすいと考えて賭け金を上げる方法も、この誤りの上に立っています。

回数を重ねると1回あたりの平均の収支が期待値に近づくという「大数の法則」も、過去の偏りが後で埋め合わされるという意味ではありません。新しい結果が積み重なって、偏りが薄まっていくだけです。

各ページで計算していること

負けるたびに倍にする方法はマーチンゲール法、ゆっくり上げる方法はダランベール法とフィボナッチ法、勝った後に上げる方法はパーレー法と逆マーチンゲールのページで扱い、いずれも同じ卓(最低1,000円・上限50,000円)を仮定して、円の金額で計算しています。賭ける割合を決める式はケリー基準、比べる基準になる同じ額の賭け方は均一賭けのページにまとめ、控除率の計算はカジノゲームの確率と控除率の章で扱っています。

よくある質問

必勝法を使えば、カジノで勝ち続けられますか。

期待値の上では勝てません。どの賭け方でも損失の期待値は「控除率×賭けた総額」で決まり、短い期間に勝つことがあっても、それは結果のばらつきによるものです。

どの必勝法がいちばん損をしにくいのですか。

期待値で比べると差はありません。違うのは結果のばらつきの形で、損失の期待値を小さくできるのは、賭ける総額を減らすことだけです(均一賭け)。

海外のオンラインカジノなら、必勝法を使っても問題はありませんか。

問題はあります。運営元がどこの国の免許を持っていても、日本にいながら賭けた時点で刑法185条の賭博罪の対象になります(オンラインカジノの違法性)。

必勝法を教えるという有料の情報やセミナーに誘われました。

賭け方で期待値は変わらないため、勝てることを約束する情報には根拠がありません。東京都消費生活総合センターも、カジノで儲けるためのコツを教えるセミナーなどへの勧誘について注意を呼びかけており、契約のトラブルは消費者ホットライン(188)で相談できます(手口は必勝法・攻略ツールの販売)。

出典と参考資料

  1. ギャンブラーの誤謬、ウィキペディア日本語版
  2. オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!、警察庁
  3. 刑法(第185条)、e-Gov法令検索
  4. 情報商材、国民生活センター、2026年7月31日更新
  5. オンラインカジノで儲かる?そんな話には要注意!、東京都消費生活総合センター、2024年4月