勝利画面と体験談の偽装:宣伝に添えられた証拠の読み方
「必勝法」の販売にも、SNSの儲け話にも、出金できないサイトにも、大きく勝った画面や体験談、同じ話をくり返すアカウントといった、証拠らしく見えるものが添えられることがありますが、こうした証拠は作るのが簡単で確かめるのが難しいという、見る側に不利な性質を持っています。
このページの要点
- 勝利画面の画像は一瞬の残高しか示さず、その前の入金やその後の負け、画像が本物かどうかを画像だけから確かめるのは困難です
- 岡山県警は2025年1月、動画サイトでオンラインカジノを宣伝していたアフィリエイター4人を、海外の運営者との共犯による常習賭博の疑いで逮捕しました
- 総務省の指針は、実在するサイトの名前に「登録はこちらから」などの言葉を添えた投稿を、注意書きがあっても誘導にあたりうるとしています
- 報酬を受けて正当な理由なく口座やカード、振込みに必要な情報を渡すことは、2026年7月10日から犯罪収益移転防止法26条の処罰の対象です
偽の証拠は、ほかの手口のためにある
このセクションで扱う四つの手口(オンラインカジノをめぐる詐欺で分けたもの)のうち、偽の証拠だけは単独では成り立ちません。勝てる方法を売る人には実績の画像が、SNSの儲け話には参加者の体験談が、出金できないサイトには大きな残高の画面が必要であり、私たちがこの手口を最後に別に取り上げるのは、それがほかの三つを信じさせる部品として働くからです。
作る手間と、確かめる手間
勝利画面の画像は、作る側にとってはほとんど手間がかかりません。画像の加工、賭け金のいらない「無料版」の画面、何度も賭けたうちの勝った一回だけを切り取った画面のどれであっても、見る側には同じ一枚にしか見えず、画像だけから本物かどうかを見分けるのは難しいからです。
仮に本物の画面だとしても、その一枚は一瞬の残高を示すだけで、その前にいくら入金したのか、その後にいくら負けたのか、出金できたのかについては何も語りません。出金できないサイトでは画面の残高そのものが運営側の入力した数字でしかないということは、出金できないサイトのページで見たとおりです。
体験談と、そろって勧めるアカウント
体験談やコメントにも同じ性質があります。一人で複数のアカウントを使い分ければ、互いに勝ったと言い合う会話を作ることができ、見る側がアカウント一つ一つの持ち主を確かめるのは現実的ではありません。
手がかりがあるとすれば、勧めているアカウントがいつ作られ(作成の時期が近いアカウントばかりではないか)、ほかにどのような投稿をしてきたかを見ることですが、これも決め手にはならないため、私たちは、証拠の見た目ではなく、その証拠を見せている人がどこで利益を得るかで判断することをすすめています。
改正されたギャンブル等依存症対策基本法(9条の2、2025年9月25日施行)は、国内の不特定の人に対して「違法オンラインギャンブル等に誘導する情報」を発信することを禁じ、総務省の指針(同じ日に改定)は、実在するサイトの名前に「登録はこちらから」「日本語対応」「入金不要ボーナス」「初回入金ボーナス」といった言葉を添えた投稿が日本にいる人に向けられている場合を、誘導の例に挙げています。
「オンラインカジノは違法であり、この投稿は利用を勧めるものではない」といった注意書きがあっても誘導にあたりうるとされているので、勝利画面にサイトの名前や登録の案内が添えられた投稿は、信用できないだけでなく、法律が発信を禁じた情報にあたる可能性があります。
私たちが確認した総務省の検討会の報告書(2026年7月)によれば、警察庁とインターネット・ホットラインセンターの集計で、2025年9月25日から12月31日までに「誘導」にあたる違法な情報が2,789件見つかり、2,542件の削除依頼のうち5営業日以内に削除されたのは558件でした。
宣伝する人は、どこから報酬を受け取るか
アフィリエイター(運営者と契約して宣伝し、報酬を受け取る人)が配信や投稿でオンラインカジノを勧めるとき、その報酬は運営者との「アフィリエイト契約」から支払われ、運営者の収入は利用者が賭けて負けた分から生まれるので、宣伝する人と見る人の利害は同じ方向を向いていません。この宣伝に見る側が身構えにくいのは、宣伝する人が自分も楽しんでいる一人の利用者として現れるからだと、編集部は考えています。
日本では、宣伝する側も検挙されています。編集部が読んだ警察庁の資料(2026年4月)によれば、岡山県警は2025年1月に動画サイトで宣伝していたアフィリエイター4人を、海外の運営者との共犯による常習賭博の疑いで逮捕し、岐阜県警は同年8月にオンラインカジノを紹介するサイトを運営していた2人を、常習賭博幇助の疑いで逮捕しました。
埼玉県警も2024年9月、アフィリエイト契約を結んで100本を超える宣伝動画を公開し、1年で約550万円を得ていたとされる人を、「賭博を手助けした」という疑いで逮捕したと報じられています(埼玉新聞)。自分の賭けを配信していた人が常習賭博の疑いで逮捕され、その後、賭博罪で罰金50万円となった例(千葉、2023年、警察政策学会の資料による)もあるので、配信の画面が映しているのは勝ち方ではなく、捜査の対象になりうる行為そのものです。
アカウントや口座の貸し借り
勝てるというアカウントを使わせる話や、自分のアカウントを貸せば勝ち分を分けるという話を持ちかけられた場合も、私たちは向きにかかわらず危険だと考えています。借りたアカウントでも日本国内から賭ければ賭博にあたることは変わらず、自分の名義や本人確認の書類を見知らぬ相手に預ければ、その名義が何に使われるかを自分では決められなくなります。
求められたものが銀行の口座や通帳、キャッシュカード、振込みに必要な情報であれば、警察庁が「口座を売ったり、買ったりすること…は犯罪です。」と書いているとおり、話はさらに重くなります。2026年7月10日からは、報酬を受けて正当な理由なくこれらを渡すことが犯罪収益移転防止法26条で3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)の対象とされています。報酬を約束されて、口座に入ったお金を頼まれたとおり別の口座へ移すだけでも、「送金バイト」として32条で罰せられることがあります(くわしくはお金をめぐる詐欺と送金バイト)。
本物の証拠とは
それでも証拠を求めるなら、本物の証拠がどのような形をしているかを知っておくと役に立つと私たちは考えています。勝てる方法であれば、賭ける前に記録された賭けの一覧を、負けも含めて最初から最後まで、利害のない第三者が日時とともに照らし合わせられることが最低限の条件で、そのうえで、賭けた総額に対する控除率(賭け金のうち運営側が平均して取る割合)という計算に逆らう結果が、偶然では説明できないほど長く続いている必要があります。
一枚の勝利画面や一つの体験談は、その形からして、この条件のどれも満たすことができません。そして、どれほど確かな記録があったとしても、日本国内から賭けることが「賭博」にあたる(刑法185条)という結論は変わりません。
よくある質問
SNSで大勝ちの画面を見せている人は、本当に勝っているのですか。
画像だけからは、本物かどうかも、その前後の入金や負け、出金できたかどうかもわかりません。勝利画面は、作る手間に比べて確かめる手間がはるかに大きい証拠です。
配信者が勧めているサイトなら安心ですか。
安心の根拠にはなりません。アフィリエイターの報酬は運営者との契約から出ており、アフィリエイターや自分の賭けを配信していた人が検挙された例もあります。
自分のアカウントや口座を貸してほしいと頼まれました。
応じないでください。報酬を受けて正当な理由なく口座や通帳、カード、振込みに必要な情報を渡すことは、2026年7月10日から犯罪収益移転防止法26条で3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)の対象です。
誘導する投稿を見つけたら、どこに知らせればよいですか。
インターネット・ホットラインセンターが「違法オンラインギャンブル」の通報を受け付けており、匿名でも通報できます。相談機関ではないため、被害の相談は消費者ホットライン188や警察相談専用電話#9110を使ってください。
出典と参考資料
- オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!、警察庁
- 令和7年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について、警察庁、2026年4月
- ギャンブル等依存症対策基本法(第9条の2)、e-Gov法令検索
- 情報流通プラットフォーム対処法第26条に関するガイドライン(違法情報ガイドライン)、総務省、2025年9月25日改定
- オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会 報告書、総務省、2026年7月
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律(第26条、第32条)、e-Gov法令検索
- インターネット・ホットラインセンター、警察庁の業務委託による通報窓口