スロットの還元率(RTP)が示すもの、示さないもの
スロットの説明に示される「還元率」(RTP)は、ゲームのすべての結果をその確率で平均した理論上の値で、たとえば96%なら、長い目で見て賭けた総額の4%が運営側に残るという意味です。このページでは、仮の数字を使ってその意味と限界を計算したうえで、日本で風営法のもとに置かれているぱちんこ・パチスロが、還元率とは別の形で規制されているという違いを説明します。
このページの要点
- 表示されるRTPは、すべての結果の確率と払戻額から計算した理論上の平均で、RTPが96%ならハウスエッジは4%です
- 期待される損失は賭けた総額に対する割合で決まり、RTP96%で賭けた総額が10万円なら、期待される損失は4,000円です
- 手元の1万円を1回100円で、当たりも含めて賭け続けた場合、編集部の計算では、RTP96%でも所持金がなくなるまでに賭ける総額は平均25万円になります
- 同じRTPでも、当たりの頻度と大きさの組み合わせ(ボラティリティ)によって、1回の遊びの結果のばらつきは大きく違います
- ぱちんこ・パチスロは風営法で規制されており、2018年2月1日に施行された基準の見直しで、大当たり1回の出玉の上限は2,400個から1,500個に引き下げられました
表示されるRTPは、ゲーム全体を通した理論上の平均
RTP(「ペイアウト率」とも呼ばれます)は、1回の賭けで起こりうるすべての結果について、その確率と払戻額を掛けて足し合わせ、賭け金で割った値で、ゲームの全体を通した理論上の平均の払戻しを表します。RTPが96%であればハウスエッジは4%で、賭けた総額の4%が運営側に残ることになりますが、それは同じゲームを非常に多くの回数くり返した場合の平均の話です。
この数字はゲームの情報画面などに示される理論値であって、1回の遊びや1日の結果を約束するものではないため、表示を見て勝ちやすさを判断することはできません。IRのカジノについては、カジノ管理委員会の規則(3条)がテーブルゲームとは別に「電子ゲーム」を認められるゲームの一つとしていますが、その開業はまだ先で、海外のオンラインカジノのスロットに日本国内からお金を賭ける行為は、刑法が罰する賭博そのものです(違法とされる理由)。
RTP96%は「1万円のうち9,600円が戻る」という意味ではない
RTPは賭けた総額に対する割合なので、期待される損失は「賭けた総額×(1−RTP)」で決まり、どの順番でどれだけ賭けても、賭けた総額が同じであれば期待される損失は変わりません。仮に1回100円の賭けを1,000回くり返すと、賭けた総額は10万円で、RTPが96%なら期待される損失は4,000円、RTPが97%なら3,000円という計算です。
手元のお金の額は、この式には出てきません。たとえば1万円を持って1回100円で遊び、当たりで戻ったお金も次の賭けに回し続けたとすると、払戻しが100円単位で途中でやめない場合、所持金がなくなるまでに賭ける総額は平均25万円(2,500回分)になります。その4%はちょうど1万円で、編集部の計算では、RTPが96%でも賭け続けるかぎり手元のお金はすべて失われるという結果になるため、RTPを「入れたお金のうち戻ってくる割合」と読むのは誤りです。
同じRTPでも、結果の散らばりは違う
RTPが同じでも、当たりの頻度と1回の当たりの大きさの組み合わせは機械によって違い、その違いが結果の散らばり、いわゆる「ボラティリティ」を決めるため、RTPが同じ機械どうしでも、遊んだ結果の出方は大きく違います。たとえば、編集部が例として作った、RTPがどちらも96%の架空の機械を2つ考え、「機械A」は48%の確率で賭け金の2倍が戻り、「機械B」は0.1%の確率で賭け金の960倍が戻り、どちらもそれ以外の回には何も戻らないものとします。
1回100円で1,000回(賭けた総額10万円)遊んだ場合、期待される損失はどちらも4,000円ですが、結果のばらつきはまったく違います。機械Aで勝ち越す確率は約9.7%、損失が1万円以上になる確率は約3.1%で、結果の多くが4,000円の負けの近くに集まるのは、小さな当たりが頻繁に来るためです。
機械Bでは、一度も当たらずに10万円をすべて失う確率が約36.8%、1回だけ当たって4,000円の負けで終わる確率も約36.8%、2回以上当たって9万2,000円以上のプラスになる確率が約26.4%と、結果が大きく割れます。平均の損失が同じでも、1回の遊びがどう終わるかは機械の作りによってまったく違うため、私たちは、RTPが同じという理由だけで機械どうしを同じものとして比べることはできないと考えています。
RTPが平均として表れるには、膨大な回数が必要です。機械Bの場合、編集部の計算では100万回まわしても平均の還元率はおよそ90%から102%の幅でばらつくという結果で(約95%の範囲)、数百回や数千回の遊びの結果からRTPを確かめることはできません。
ぱちんこ・パチスロは別の法律で規制されている
日本のぱちんこ屋は、客に「遊技」をさせる営業として風営法が定める「風俗営業」の一つにあたり、同法23条は、現金や有価証券を賞品として出すことも、客に出した賞品を店が買い取ることも禁じています。料金の上限も施行規則で玉1個4円、メダル1枚20円と決められていて(消費税等は別)、賞品をめぐる仕組みについてはぱちんこと三店方式のページで説明しています。
「出玉」の基準は、平成29年国家公安委員会規則第9号による改正(2018年2月1日施行)で見直され、大当たり1回で出せる玉の上限が2,400個から1,500個へ、「回胴式遊技機」(パチスロ)のメダルの上限が480枚から300枚へと下がりました。いまの施行規則(8条)には、4時間打ち続けた場合に獲得できる玉の数が、打った玉の1.5倍を超えることがあるか、5分の2を下回ることがある性能の遊技機についての基準が書かれています。
私たちが読んだ政府の基本計画によれば、令和4年春までに、すべての遊技機が「射幸性が抑制された新基準」に合うものに入れ替えられました。私たちが確認した法令の基準は、一定の時間に獲得できる出玉の幅や大当たりの上限を定めるもので、カジノのスロットのように1つの「還元率」を示すものではありません。機種ごとの払出しの割合については、公的な資料で確かめられる数字が見つからなかったため、このサイトでは扱っていません。
よくある質問
RTPが高いスロットを選べば勝てますか。
RTPが100%未満であるかぎり期待値はマイナスで、RTP96%なら賭けた総額の4%が平均して失われます。遊ぶ回数が増えるほど、賭けた総額に対する損失の割合はこの数字に近づきます。
RTP96%なら、1万円で遊ぶと9,600円が戻りますか。
そうではありません。RTPは賭けた総額に対する平均の割合で、当たりを賭け続ければ賭けた総額は1万円を大きく超え、途中でやめなければ手元の1万円がすべて失われる計算です。
ボラティリティとは何ですか。
当たりの頻度と大きさの組み合わせによる結果の散らばりのことです。RTPが同じでも、ボラティリティの高い機械では、1回の遊びの結果が期待値から大きく外れやすくなります。
パチスロの還元率もRTPと同じように示されていますか。
私たちが確認した風営法の基準は、4時間などの一定の時間に獲得できる出玉の幅や大当たりの上限を定めるものです。機種ごとの払出しの割合は公的な資料で確かめられなかったため、このサイトでは扱っていません。